初代ポケモンの曲はいかにして作られたか~「ポケモン」シリーズの作曲家増田順一さんのインタビューの感想。

「サウンド・デザイナー 2016年 09月号」五線紙の上に音符代わりに配置されたポケモンたちがかわいい。ドカンと大きく初代ゲームボーイが印刷されているのも、世代的にちょっとグッとくる

懐かしい気持ちを呼び覚ましたいとき。

僕は「ポケモン赤・緑」のサウンドトラックを聴きます。

始まりの町「マサラタウン」の牧歌的なBGMを聴いていると、尋常じゃない郷愁(きょうしゅう)に襲われます。そして「赤緑」のBGMを作った増田順一さんへの尊敬の念が沸き上がります。

尊敬の念が沸き上がりすぎたので、増田さんのインタビューが載っている雑誌を見つけました。

それが冒頭の画像の、「SOUND DESIGNER(サウンドデザイナー)2016年9月号()」。この雑誌の中で増田さんが初代ポケモンの音楽づくりについて答えていたので、一部引用しつつ、その感想を書きたいと思います。

※このページで引用している画像や文章はすべて本書からの引用です。

レビュー&感想

作曲家・増田順一さん

黄色いバックと、それにもたれかかるかのようにダブルで鎮座しているピカチュウ。それらすべてを超越する位置で何かを語る増田順一さんの姿です。

正直なところ名前や存在は知っていても、「姿」そのものを拝見したことはほとんどなかったので「おりょっ、なんか若い」と思いました。

 

作曲者本人が語るシオンタウンの曲が生まれたいきさつ

――ところで、「赤・緑」の「シオンタウン」という町で流れる曲はすごく悲しくて、多くのプレイヤーに強烈な印象を残しました。あの曲はどのようにして生まれたのですか?


増田:あの曲は、「赤とんぼ」とか「さくらさくら」のような古い日本的な音階を使ったメロディになっています。日本の古い曲には、ちょっと呪術的な怖さがありますよね。でも実は、当時は「このシーンのために曲を作る」といった作り方をしていなくて、ポップな曲であったりとか、悲しい曲を個別に作って、それぞれハマるところにBGMとして当てていったという感じなんです。で、たまたま悲しい雰囲気の曲がハマるのがシオンタウンだったんですね。そう言えば、日本だけかと思っていたら、この前フランスに行った時も「シオンタウンの曲は怖い」と言われました(笑)。

※文章内の着色は管理人が行ったものです

さて、↑の引用文を見てわかる通り、本誌には「マサラタウン」のほのぼのとしたBGMの作り方が載っているのかと思いきや、「シオンタウン」の曲の作り方について書かれていました。

あの「私怨」まみれの怪しげな曲はこんな感じで制作されたんですね。僕は小学生当時シオンタウンをうろつくのが怖すぎたので、ずっと街中を自転車で走って、強制的にBGMを変えていました。

なので「怖い曲だった」という断片的な記憶があったものの、具体的にどんなメロディだったか忘れていたのですが、サントラを聴いて思い出しました。

やっぱり改めて聴いても「怖えな」と思います。

その「怖え」曲は、古い日本的な音階を作って作られているそうですが、確かになんとなく「和」っぽい感じはします。

その情報を頭にぶち込んでから聴いているからそう感じるだけなのかもしれませんが、言われてみれば確かに「よどんだ童謡」っぽいかも…という感じがします。

事前にたくさん作った曲の中から「これがシオンタウンに合う曲だ」ってな感じでただ当てはめただけってのもなかなか新情報で、新鮮にインタビューを楽しめました。

ところで、インタビューはこれで終わりません。

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ゲームボーイでの作曲法

――ゲームボーイの場合、4つの音だけで曲を構成するという制約がありますよね。


増田:そうです。だから、例えば「赤・緑」のパトルシーンの曲ではドラムが使えなかったんです。通常はドラムとして使う「ノイズ音」を、パトルでは効果音として使うので、ノイズをドラムとして使えないんですね。なので、例えば「ド、ソ、ド、」という2つの音符を行き来するべースラインをループさせて、リズムキープの役割を持たせました。効果音を鳴らす必要がないタイトル画面とかでは、ノイズ、べース、2つのメロディをすべて使えるんですけどね。でも、パトルシーンではそれができなかったんです。

※文章内の着色は管理人が行ったものです

僕は普段、レトロゲーム風の曲を趣味で作曲したりするので、この辺の話も興味深かったです。


レトロゲーム風の曲を「それっぽく」つくるためには、最大でも4つしか音を同時に鳴らしてはいけない。

その法則自体は知っていたんですが、どうしてもドラム音を鳴らせない時はベース音で代用する方法があるというのはこのインタビューを読んで初めて知りました。

あの懐かしの昔ながらのメロディを再現するために、(ちょっと)地味だけど天才的な発想が生かされていたんですね。

なかなかタメになる話が聞けてうれしかったです。

おわりに

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 ちなみにインタビュー部分に関しては数ページしかない(ほかのページは別の人による8bitサウンドの作り方講座などが書いてある)ので、その点は注意が必要です。

といったところで、今日はここまで。