西森博之先生のデビュー作「プー太郎」を読む。【感想/レビュー】
Contents
まえがき
ようやくデビュー作を拝めました。
小学生の頃、当時友達だった S くん(仮名)の家で出会った「今日から俺は」。
あのマンガを読んで以降、西森博之先生の作品はほぼ全作読みました。
子供の頃は「今日俺」「天こな」に笑わされ、ハラハラさせられ。
そしてその後も「お茶にごす。」を何周も読み返すぐらい好きになり今は最新作の「カナカナ」の更新を毎月めちゃくちゃ楽しみにしている。
そんな人生の至福を与えてくれた西森先生の、デビュー一発目の作品「プー太郎」。
この漫画の存在自体は知っていたんですがとうとう入手できました。
よって、決めました。
今日はこの漫画のレビュー記事を書きたいと思います。
ちなみに結論から言うと、もうすでにこの一発目の時点で西森博之先生の作風はほぼ確立されていたんじゃないかと思うような内容でした。
掲載されていた本
ちなみに掲載されていた単行本はこの「西森博之短編集(小学館)」です。
今までコミックス化されていなかった西森先生の短編がいくつかあるのですが、それらが急に一つにまとめられた本です。
(※この記事内の画像はすべてこの「西森博之短編集」からの引用です)
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短編集の目次
目次はこんな感じで、やっぱりデビュー作らしく一番最初に「プー太郎」は掲載されています。
レビュー/感想
西森要素①~主人公たちの名前~
さておわかりいただけるでしょうか。
上の画像は、プー太郎の冒頭のシーンです。
この冒頭のシーンで主役とヒロインの名前をお互いに呼び合っています。
真二と理恵。
真二と理恵……。
何か思い出しませんか。
そうです。「真二」といえば「今日から俺は!!」の「しんじ」(伊藤真司)と全く同じ名前です。
そしてヒロインの「理恵」の漢字は理子の「理」。
さらに「理恵」の「恵」は天使恵の「恵」の文字が使われています。
僕はこれを読んだ時、
「うっほほーい!」
と叫びました。
「もうこの時点で、のちの主役やヒロインたちのことを思い浮かべていたんじゃないか!?」
そんな思いを感じつつ、雄たけびを上げたのです。
ただ後になって知るのですが、西森先生は単純にこれらの名前が好きだったから名付けたそうです。
「うっほほーい」と叫ぶほどのことではありませんでした。
西森要素②~「ギャグとシリアスが5対5でブレンドされた妄想劇」がはじまる~
さて続いては上の画像をご覧ください。
主人公の真二が何やら妄想しています。
そして葛藤しています。
一体どうするべきかと。
今自分の目の前にある困難に対してどんなアプローチを繰り広げればいいのか。
そんな想像を膨らませているのです。
その想像のシーンには、「ギャグとシリアスが入り混じった脳内ドラマ」が展開されるのです。
この感じ、近年に発表された「カナカナ」や「柊様は自分を探している。」にもよく出てきます。
この頃からストーリーの中にこういうシーンを挿入するのが好きだったんだなぁというのが分かります。
西森要素③~本来のセリフとは別の、手書きの小さなフキダシ~
さて今度も上の画像を見てください。
上の画像を見つめすぎて首がつり始めてるかもしれませんが構わず上を見てください。
何やら主人公が叫んでますね。
でも僕が着目したのは主人公のセリフではありません。
その下にちっちゃく存在する悪役のセリフです。
何やら手書きの文字で書いてますよね。
この手書きの文字によるギャグっぽいつぶやき。
この手法ももうすでにデビュー当時から使っていたんだなと驚きました。
ちなみにこのギャグっぽい小さなフキダシは他のシーンでも散見されます。たまたまこのシーンで気まぐれで使ってみましたという感じじゃなく心底好きなんだろうなあと思います。
西森要素④~悪逆非道なヒールの登場~
そして最後の西森要素はこちら。
悪逆非道な悪者の登場です。
悪逆非道な悪者の描写には定評のある西森先生の、デビュー一発目の悪逆非道描写です。
ほとんど半分素人の頃からこんなにも嫌な奴らを上手に描けるなんて流石と言わざるを得ません。
もちろん今だったらさらにねっとりと相手を追い詰めるような陰湿陰険な言葉を突きつけていると思いますが、すでに十分なぐらい悪役が悪役めいた台詞を口にしています。
今後さらに悪のボキャブラリーが発展していくことをこの時誰が予想したでしょうか。しかしその片鱗は確かにこのデビュー作から見いだすことができます。
西森先生ご自身の寸評
デビュー作ですから、当然100%西森作品です。
見てください表紙のカーテン!頑張っていますね。カーテンを透過して見える窓枠、コリコリ一生態命描いています!頑張ったヤング西森ですが阻いは外れています。
さてこの短編集のいいところは西森先生が全作品についてそれぞれコメントしてくれてることです。
しかし上記の引用文の通り西森先生は真面目に寸評などをなさりません。
ふざけ切ってくれています。
まるでギャグマンガの解説のようです。
若干真面目なコメントも聞きたかったという気持ちがなきにしもあらずですが、こういうところが西森先生の好きなところだったりもします。
※ちなみに西森先生のファンブック「西森博之本」では打って変わって、めちゃくちゃガチな解説を先生がしゃべっています。
→「漫画家本 VOL 8 西森博之本」の、西森先生のインタビューを読みつつ感想を書きます。【レビュー】
おわりに~「名前の件」の真相~
さて最後は西森要素①で紹介した名前の件についてちょこっとだけ触れてレビューを終わりたいと思います。
大体の作品は掲載を約東されて作っていないため、深く考えずざっくりと名前をつけていたのです。リエ、シンジ、高橋とか多いのはそんなわけです。好きな名前だったのでしよう。
…という、西森先生の証言通り理恵とかしんじっていう名前が好きだったからつけたとおっしゃっています。
深く考えずにつけた、「しんじ」(伊藤真二)という名前が今やドラマ化もされ日本全国の人に知られる名前となりました。
未来って本当にわからないものですね。
なんだか昔の金曜ロードショーの水野晴郎さんみたいなセリフを吐いてしまいました。
もう限界です。
これにてレビューを終わりたいと思います。
ありがとうございました。