幻の?ボンボン坂高校演劇部の読み切り版を読む【感想/レビュー】

「ボンボン坂高校演劇部・特別読切」(作・高橋ゆたか)※ボンボン坂高校演劇部文庫版(集英社)5巻収録。※このページで引用している画像はすべて本書のものです。


『ミルク色の深い深い霧につつまれた』街を正太郎が闊歩しています。

わかりますか?みなさん…。

そう。

ボンボン坂高校演劇部の読み切りバージョンの出だしです。

ボンボン坂~の文庫版5巻を読んでいたら巻末に存在していたこの漫画。おそらく連載前のものだと思います。

今日はこのボン坂読切版のレビュー&感想を書きます。

レビュー

●恋愛マンガ…?

少女漫画のようなタッチで描かれた導入部

冒頭のシーンからシームレスに展開される純情ラブストーリー。

ヒロイン真琴に心配される純情野郎正太郎くんの顔が紅潮しています。

「静かにほほえんだ幻のような笑顔」

というポエミティックな心情吐露にこっちも悶絶。

「ああ、なるほどこれは恋愛マンガなんだ!」

そんな思いをぶち破るのが…。

御存知、真・ヒロインの部長さんです。

読切版では画像のように尋常じゃない口髭を携えている彼は、これまでの流れを一変。絵柄すらギャグマンガ調に変えてしまうというカリスマ感を放っています。

ちなみにこの展開はまんま連載時の第1話と一緒です。

だから当然、誤解も受けるし部長にあれやこれやされてしまいます。

たぶんですが、読切版の反響がよかったのであんまり連載時に直しがなかった(?)のかもしれません。

●ちょっと雰囲気の違う真琴

さて読切版の「ボン坂」最大の注目点といえば!

↑シーンごとに顔の描き方が違う…?

そうです。

真琴の顔面がコロコロ変貌してしまうのです。冒頭の恋愛マンガ的な絵柄の時もまた違った顔面でしたが、その後もずんずんと変貌していってます。

ワンカットごとに違った真琴が楽しめる。それはある意味時を超えて現代に託された奇跡です。

ちなみに2000年代に発表された「ボンボン坂高校アンコール」ではさらにメインキャラたちがリアレンジされています。(→「ボンボン坂高校演劇部 アンコ-ル」とオリジナル版のキャラの画像を並べて比較してみる。/【 感想&レビュー】)

それぞれの時代ごと(読み切り時、連載時、連載後)の絵柄の進化も見ていて面白いです。

●もうシンデレラ

↑「シンデレラ」の稽古をする演劇部員たち

ちなみに読切版は前編と後編の全2話で構成されているんですが、あらやだ。

もう読切版の時点でシンデレラの練習やってたんかいななシーンが登場します。

連載版ではもうちょっと話数を重ねてから舞い起こるチャプターなんですが、読切版は展開が早い。そして会話も連載時とかなり似通っています。

『してるふりするだけよ』

と正太郎君を鎮めるシーンもあります。

が!

↑恋愛マンガでも通用しそうなリアルめな描写

その後がっつり人工呼吸でディープキスされます。

もはやこれでハッピーエンディングでもいいんじゃないかな展開。

賢明な真琴の救助活動は、この後正太郎が目を覚ますことで…。

…で、最後になんやかんやあって「チャンチャン」という感じです。一応ネタバレは描きませんが、ギャグマンガ的な終わり方で、次週からも普通に続きそうな終わり方でした。

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□おわりに

さて、そんなわけでボンボン坂高校演劇部の読切版のレビューは終わりです。

文庫版の5巻の最後らへんに収録されてるので、興味がある方は探してみてください。