「ピコピコ少年EX」(押切蓮介)を買ってきたので感想&レビュー。
「ピコピコ少年EX」を買ってきました。
相変わらず作者の方のギャグセンスは健在なのですが、今回はちょっと趣が違います。
最初から最後まで作者の現在について描かれているのです。
つまり今回は幼少期のエピソードがほぼないのです。
そういった意味でピコピコ少年シリーズの中でもかなり異質なものになっているのですが、その点も踏まえながら感想を書きたいと思います。
感想&レビュー
今巻の方向性について悩む作者
昔のノスタルジックな雰囲気も皆無…
小学生の可愛い神ちゃんもほぼでねえ…
と悩んでいる作者のページがあります。
この本はもともとWeb連載なのですが、その連載の最中に自分自身の方向性についてかなり苦慮しているのがわかります。
現在の大人になった自分自身を描くことに果たして需要があるのだろうか?
そんなことを思い悩みながら暗いテンションになっている作者。
他のエッセイを読んでいても感じていたのですが結構自問自答しながら思い悩む方だと思うので、ここで「ピコピコ少年」というコンテンツに対して一度冷静になっているのでしょう。
いってはなんですが個人的にはこういった心情吐露があることがリアルで面白く読めました。
やりたい放題楽しく書いてるぜっていう感じの空気だったのに意外と試行錯誤してらっしゃるのだなあと感じて何て言うか人間という存在の奥深さを堪能できました。
大人になった貴音ちゃんと山田さん
今巻の数少ないノスタルジック要素。
それは第一巻(「ピコピコ少年」)で登場した貴音ちゃんという幼馴染と再会した一コマです。
ここから濃厚な思い出話に花を咲かせるという展開かと思いきや、意外とすんなり終わってしまいます。
もちろんもしそんな展開に至っていたのであれば今回もノスタルジック全開なものになっていたのでそうならなかったのは当たり前なのですが、びっくりするほどあっさり終了してしまいます。
ただ山田さんという男性とのエピソードは今回も濃厚に展開され、大事な友人ではあるもののなぜか嫌悪してしまうという特殊な間柄をコミカルに描いています。
巻末に謎の短編
さて今回の見所はもう一つあります。
それは謎の短編がラストに展開されていることです。
作者がただ海を目指して歩き続けるという独特の雰囲気を持ったショートストーリー。
僕自身も気が付いたら自分一人の世界に入り込んでいたり、ただひたすら歩き続けてしまったりすることがある人間なので、こういった超内省的な物語というのはぐっと引き込まれるものがあります。
作者の方自身はこの物語を読み返すのが恥ずかしいとコメントしていましたが、個人的にはかなり好きです。
常に他人と関わって生きていてコミュ障とは無縁の人間にとっては共感できる部分はないかもしれませんが、刺さる人には刺さるんじゃないでしょうか。
少なくとも、「気がついたら自分の世界に入り込んじゃう系」の僕にとっては主人公とシンクロして読めました。
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おわりに
さてそんなわけで「ピコピコ少年EX」 の感想もこれでおしまいです。
冒頭で挙げたように今作はノスタルジックメインで買い求めた人にとってはちょっと肩すかしな内容だったと思います。
ただ僕個人としては最初はそういったものが目当てでこのシリーズを買っていたものの、気がついたら作者自身のファンになりつつあるので面白く読めました。
読む人を選ぶ内容になっているかな、と思います。
過去作と同じような内容を期待している人は注意です。