「漫画家本 vol 8 西森博之本」の、西森先生のインタビューを読みつつ感想を書きます。【レビュー】

「漫画家本 vol 8 西森博之本」(小学館)。「今日から俺は」の主人公三橋と伊藤がちびキャラになってはしゃいでる姿が愛らしい。※このページで引用されている画像や文章は全て「西森博之本」のものです。


「西森博之本」を買ってきました。

この本は西森博之先生のロングインタビューが載っている本です。


この本が出版された時点での最新作「柊様~」までの作品について触れられています。


正直読む前は、なんだかんだ言ってもあんまりコアな部分には触れていないかも…と思ってたんですが、思った以上に各作品について詳細に答えていたので驚きました。

本当なら全ページ引用して事細かに感想を書きたいところなんですがそれはさすがにできませんので…。

一部を引用しつつ個人的な感想を書きたいと思います。

※注意!
西森先生の各作品のネタバレがゴリゴリにあります。ネタバレを踏みたくない方は読まない方がいいと思います。



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感想&レビュー


目次ページ

↑西森博之本の目次ページ

さて、見てわかる通り…。

西森先生の仕事場紹介のページが冒頭にあったり、漫画家くらもちふさこ先生との対談があったりと
結構濃密な内容です。


それと冒頭触れ忘れましたが、この目次を見てわかるとおり漫画の作品だけではなく小説作品に関してもインタビューに答えてくれてます。

これがめちゃくちゃありがたい。
今まさにそれを読んでたところなので…。個人的にタイムリーでした。


ということで、次はいよいよ西森博之先生の「ロングロングインタビュー」について触れます。



「天使な小生意気」の結末について

―――『天使』は最初から結末というか真相は決めていたんですか。


西森  そうですね。めぐをああした魔本がどういうものかとか、魔本から出てくる小悪魔がああいうやつだ、とかね。



個人的に気になった箇所をピックアップしているんですが「天こな」についてはこの部分が一番気になりました。

結末決めてたんですね。

あの最終回から逆算してストーリーを描いてたのか…とか思いながら感慨にふけました。ちなみに当時読者だった僕は、恵は本当に呪いのせいで女の子になってしまったキャラだと思ってました。

西森先生に思いっきり騙されまくってたことになりますね。

ちなみに最終回の最後のコマで何だかよく分からない英文が出てきますがあれの意味も初めて知りました。

最初から読んでみてと書いてるそうです。

要するにちゃんと伏線を描いてたっていうことなんですよね。
でも正直それを知った今読み返してもどれが伏線だったのか全く分かりません。

自分のアホさ加減に呆れてしまいます。

が呆れ続けてもいられないので次に行きましょう。



「道士郎」の意外な構想について

西森  (前略)~『道士郎』は、連載が長くなったら健助が道士郎に「暇を取らせる!」とか言って、道士郎が離れて違うやつのところに仕えるという展開を考えていました。だから主人公と言い切るつもりはないけど、道士郎がストーリーを展開しているのは確かですかね。本当は主君を切り替えるところまでやってみたかったですね。



これもめちゃくちゃ意外だったんでピックアップしました。

個人的には健介に仕え続ける一本気な道士郎が好きなんで、そのままの展開で良かったんですけど今改めて考えたらそういう別展開があってもよかったのかなとも思います。

道士郎とは真逆な、めちゃくちゃ卑怯なキャラ(悪役)に仕えることになったり。

はたまた、女性キャラの家臣になったり。…もしそうなったらラブコメ的な展開になるかな?とも思ったんですが、道士郎が恋愛をするっていうのはあんまり描(えが)けないなーとも思ったりします。

仮にそういう展開になったとしても、逆にその女性キャラのほうがまっすぐな道士郎に恋をして…

うん、こっちのほうがありえそうですね。

そしてその後もいろんな人に仕えて…。

でも最終的には健介に戻ってきてほしいですね。

いろんな人に仕えてみたけどなんか違った、みたいなそういう展開だったら読みたいなーと思います。

いや…どういう展開だったとしても道士郎のパラレルワールドは読んでみたいですね。

西森先生は最新作を書くたびに以前のキャラをモブキャラとして描いたりもしているので、もしかしたらいつか公式のスピンオフみたいなものをご自分で描いたりして…と勝手に空想しています。



「お茶にごす。」のあのシーンについて


―――最終巻で部長が卒業したあと、まークンが学校の前を歩いているところでバッタリ出会って、部長がまークンに自分のマフラーをかけてあげるところがすごくいいですよね。
~(中略)~
―――卒業式が終わって後日、ということですよね。

西森  松任谷由実の歌に「最後の春休み」という曲があるんですね。春休みの学校にひとり忘れたものを取りに来るっていう、なんかあの感じが描きたいと思ったんですよ。あれはこの場に、この思い出の時間に蹲(うずくま)っていたい。という詞ですが、僕はそこに続きがある。あった話が描きたかったんです。それを念頭に思って描いていたんです。


このインタビューを読んだ直後にサブスクで探しましたね。

松任谷由実さんの「最後の春休み」


ラッキーなことに配信されてました。

「サブスクってなんぞや?」

と思う方がいるかもしれないので説明しておきます。

(※知ってる方は読み飛ばして全然オッケーなのでスルーしてください)

決まった金額を(先に)払っておけば1か月間無料で様々な音楽が聴けますっていう種類のスマホアプリのことです。もちろん世の中に存在するすべての曲が全部聞けるってわけではないんですが、かなりの局数・アーティスト数が登録されています。その中に松任谷由実さんの曲もありました。

自分は「LINEミュージック」というサブスクに加入してたんですが、もしかしたらほかのサブスクでも配信されているかもしれません。

「AWA」とか「Spotify」とか(音楽聞き放題系の)サブスクはいろいろありますが、わりとほとんどのサブスクで配信されている曲がかぶってたりするので…。


(※amazonにもありました)

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さて、「最後の春休み」についての話に戻ります。

確かに凄く良くて「お茶にごす。」をアニメ化したらエンディングで流して欲しいなあと思いました。
(※ただ曲中の1人称が「私」なので、「俺」だったらもっとしっくりいったかも)

個人的にはサスケの「青いベンチ」っぽい世界観の歌だなあと感じます。「青いベンチ」も学校生活の中で恋をした相手に未練を抱え続けている…というバラードなので、想起してしまいました。

※ちなみに「青いベンチ」もLINEミュージックで配信されてました。これも他のサブスクでも配信されてるかも…)

松任谷由実さんの「最後の春休み」については、他に「卒業写真」っていう、テーマががっつりカブった超名曲があるから有名になれなかったんでしょうね。僕自身、このインタビューで知りましたし…。


…と色々書きながらほかにもそんな「学校×未練」ソングがないか脳内の記憶保管庫をかっぴらいて探してるんですが見つかりません。なんかほかにもそんな曲あった気がするんですが…なんだったっけなあ?

ともかく、部長とまーくんのあのシーンを描いてる際に西森先生がどんな思いでいたかが知れたのは収穫だったと思います。


「柊様」とフルデジタル移行について

―――(前略)ところで、『天使~』の原稿はどのくらいデジタルなんですか。

西森 そのころはまだカラーだけ。しかもカラー原稿も、ペン入れまではアナログでやってるしね。仕上げをデジタルでやるようになったのは『鋼鉄の華っ柱」からで、原稿全てをフルデジタルにしたのは『柊様』が初めてです。



これも「おっ」と思わせる質問でしたね。

というのも普通に読んでいる限りはデジタルかアナログかの区別が全然つかなかったんですよ。

他の漫画家さんの絵だと「あ、この漫画からデジタルに移行したんだな」とかいうのがはっきり分かったりするんです。

でも西森先生の絵柄は何故かアナログかデジタルかの判別がつきにくいんですよね。おそらく先生の絵柄やペンタッチのせいでしょう。ともあれ、長年謎だった「西森作品はどこからデジタルになったか」が知れたので満足です。


…ってあれ?

いやまてよ?

本当に絵柄やペンタッチのせいだろうか?

それよりも、デジタル技術の進歩のせいではないだろうか?

…いやなんでそう思ったのかと言いますと、
昔のデジタルで書いた漫画って、どう考えてもこれデジタルで描いてるよなあっていうのがわかりやすかった気がするんですよ。

昔は線に「ジャギー」って言われる、線をデジタル変換したときに表れる独特の粗さみたいなのがあったんです。でも今のデジタル漫画ってジャギーが少ない気がするんですよね…。解像度が上がったからかな?

つまりまとめると、

・「デジタルで描いたかアナログで描いたか」が分かりにくいのは西森先生の絵柄やペンタッチのせいではない
・デジタルを本格的に取り入れたのは「柊様~」(2016年)以降
・その2016年時点でパソコンやお絵かきアプリの性能が上がり、本物のペンで描いたような筆致に仕上がるようになった


おそらくこういうことでしょう。
おかげで「柊様」以降の作品がデジタルとアナログの区別がつかない仕上がりになったんだと思います。…たぶん。


「西森博之本」全体の感想

さて最後にこの本全体の感想を。

一言でいうと、個人的には「買ってよかった」とはっきり言い切れる内容でした。

冒頭でも書きましたがいい意味で期待を裏切られたと言うかこんなに詳細に作品について語ってくれたのって久しぶりじゃないかとすら思いました。


何度も言うように、本記事で紹介しているのはインタビューのほんの一部に過ぎません。

ほかにも引用して語りたいところがもっともっとたくさんありました。



それとインタビュー以外もよかったです。

自身がファンであるというくらもちふさこ先生との対談も結構面白かったし、西森先生が新人の頃に書いた未公開の読み切りマンガもまるごと1作掲載されてたし。

もし古本屋で見つけたら西森博之先生ファンは絶対買った方がいいと思います。
(これまだ新品でも売ってるんだろうか?)



逆にこの本を読むのに向いてないのは…

最近ファンになって「今日から俺は以外の作品についてはあんまりわからない」と言うライトなファンの方には向かないと思います。

それと各作品のネタバレがゴリゴリにあるのでネタバレが知りたくないという人にも向かないかなと思います。

マニア向けな内容ですね。

以上です。

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