小野敏洋(おのとしひろ)さんの時代を先取りしすぎた漫画・太陽の少女インカちゃんを読む。【感想&レビュー】

太陽の少女インカちゃん〔小野敏洋・著〕(Dengeki comics EX) [メディアワークス]※このページで引用している画像はすべて同書のものです。


バーコードファイターやポケモンの漫画でおなじみな、おのとしひろ先生の過去作「太陽の少女インカちゃん」をようやく入手しました。

電撃コミックスから発売されていたのは知ってるんですが、古本屋を探してもなかなか見つからず…。サイズも意外や意外、通常の単行本サイズじゃなくポケットモンスターの時のような縦に長いタイプだったんですね。

ネットで買ってようやく手に入りました。

今回はこの本のレビュー的なモノを描きたいと思います。

レビュー

●主人公はこっち

はい。

実はこっちが主人公です。

冒頭の画像に出てきた、主人公感のある感じで表紙のほとんどの部分を牛耳っていたあの女の子は本作のヒロインで、主人公のインカちゃんはこのマスコットのような女の子です。

黄金の仮面をかぶったこの子もインパクト大なんですが、他にもいろんなキャラがいて、その誰もが…

インカ文明縛りなネーミングです。

コスタリカを小須田梨香とするあたりはうまいなーと感心します。ただそんなことよりも石に頭部がうずもれてるけどどういうこと!?と思うでしょうが、そこは作者の方の異次元なセンスなので凡人の僕らにはなかなか理解しがたい部分です。

考えるのはやめましょう。

ということでこんな見るからに個性的な面々が織りなす物語なんですが、この登場人物紹介ページではわかりにくい面もあると思います。

「いったいどんなストーリーなのか」。

その疑問を解き明かしてみたいと思います。

●ガールズラブ

ガールズラブ。

あまりにも時代を先取りしすぎた漫画です。

もしかしたら昔からこういったマンガは意外とポピュラーだったのかもしれませんが、今ほど数は少なかった…と思います。たぶん。

主人公のインカちゃんはヒロインの女の子マヤのことが好き。

なので画像のようなシーンも作中に登場します。

ちなみにマヤの気持ちは…↓

フクザツ。

相思相愛ではないんですね。

「中米マヤは困っている」

というテロップで表されている通り、基本的にはマヤはインカちゃんに恋愛感情はない様子。

ただこの1巻のあるシーンで、ある事情で自分からキスする場面があるんですがそれはまた別の話。

ちなみに回を追うごとに人間関係は深み(?)を増し…

チチカカ湖…じゃなく千々華架子という美少女が現れ三角関係に発展していきます。

「インカちゃん先輩」

という独特の日本語を駆使して、マヤにライバル宣言までしています。

これは2019年現在、安田大サーカスのクロちゃんのことを新人グラビアアイドルさんあたりが、

「クロちゃんさん」

と呼んでしまう現象にも似たトリッキーさを感じます。

強烈キャラの千々華ちゃんには、グイグイ系のインカちゃんも「!?」と驚き、ペースを乱されまくり。

●バトル漫画の側面も

インカキックをインカちゃんがぶち込んでいます。

いきなりガールズラブから変わって驚きましたか。そりゃそうですよね。いきなりなんだって話です。

そうです。実はこの漫画、バトルシーンもあります。

というか、むしろこれが本筋なのかもしれません。

「なのかも」

と自信なさげな理由は…実際この漫画、どういうジャンルでくくっていいか(言い切っていいか)がかなり難しいんです。

「マジックザギャザリング」の漫画を描いているとき(※)は、一応マジックの世界観の中で一続きになっていました。

(※) 
・バーコードファイターでおなじみ・小野敏洋さんの漫画『MAGIC―URZA&MISHRA』を買ってきたからいまさらレビュー

しかしこの漫画は、作者の方の自由度がマックス超えていまして、数ページ過ぎれば全然別の事件(さきほどのようなガールズラブ展開)があったりとかなりカオス。

なので、この漫画は「バトル漫画」、…という解釈もできるのです。

いや、しいて言うならカオス漫画…カオス漫画が正解だと思います。

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□おわりに

さて最後に、インカちゃんの1巻で最も自由度マックスな画像でお別れです。

作品の最後に描かれたのはなんと唐突な新連載予告。

メガネをかけた女の子たちが大活躍!な漫画を予告して終焉です。

こんな幕の引き方はルナシーですら不可能。

不可思議な終幕に困惑する僕らを心地よく置いてけぼりにしてくれる、作者さんのフリーダムさに敬意をこめつつ、レビューを終わります。